魚を捌く包丁とは?「出刃」と「柳刃」、初心者・用途別におすすめを紹介

魚を捌く包丁とは?「出刃」と「柳刃」、初心者・用途別におすすめを紹介

魚の旨味を引き出す「魚捌く包丁」。基本は「出刃包丁」と「柳刃包丁」ですが、実は捌きたい魚によって最適な包丁は異なります。

例えば、アジなどの小魚なら「アジ切り包丁」、鯛の骨を断ちたいなら「出刃包丁」、刺身を引くなら「柳刃包丁」といった具合です。

この記事では、あなたの目的に合った「魚捌く包丁」の種類と、失敗しない選び方を徹底解説します。

魚を捌くのに必要な包丁とは? 

魚を本格的に捌いて刺身にするためには、理想を言えば「出刃包丁」と「柳刃包丁」が必要です。

なぜなら、三枚おろしができる出刃包丁と、刺身を引ける柳刃包丁では、包丁に求められる機能がまったく違うからです。

ここでは、魚捌きに最低限必要な2種類の包丁、「出刃包丁」と「柳刃包丁」のそれぞれの役割と特徴を解説します。

① 出刃包丁(捌き・骨断ち用)

魚を捌くための専用の和包丁です。刃が非常に厚く、重みがあるのが特徴で、その重さを利用して魚の硬い頭を落としたり、中骨を断ち切ったりします。

三枚おろしなど、魚の骨に沿って身を切り分ける「力」が必要な作業全般を担当します。まさに「捌く」ための包丁です。

② 柳刃包丁(刺身用)

出刃包丁で捌いた後の「身(サク)」から刺身を作るための専用包丁です。刃渡りが非常に長く、薄いのが特徴です。

刺身は包丁を前後にギコギコ動かすと繊維が潰れて味が落ちるため、この長い刃を活かして「一度で引き切る」ことで、角が立った美しい断面の刺身を作ることができます。

用途別:魚を捌く用の包丁

魚捌きの基本は「出刃包丁」と「柳刃包丁」ですが、捌く魚の種類やシーンに合わせて、さらに専門化された包丁が数多く存在します。

例えば、関東と関西での形状の違い、小魚専用の包丁、あるいは鶏用だった包丁が魚捌きで注目されるケースまで様々です。

ここでは、基本の2本以外に存在する、魚捌きをさらに深く追求するための多様な包丁と道具をご紹介します。

③ 蛸引き包丁(刺身用・関東型)

柳刃包丁(関西型)と並ぶ刺身包丁の一種です。

柳刃包丁が先端が尖っているのに対し、蛸引き包丁は先端が四角い「切っ先角型」をしているのが特徴です。

その名前から「タコ専用」と思われがちですが、用途は柳刃包丁と全く同じく、マグロやヒラメなど刺身全般を引くために使われます。(名前の由来は、タコの足を薄く引くのに適していたため、など諸説あります)

④ マグロ包丁(大型魚・解体用)

その名の通り、マグロを解体するために特化した巨大な包丁です。

刃渡りが非常に長く(60cmを超えるものも珍しくありません)、マグロのような大きな魚の身を一度に大きく切り出すために使われます。家庭で一般的に使用するものではありません。

⑤ アジ切り包丁(小魚専用)

アジやイワシ、キスなどの小魚を捌くことに特化した、小型の出刃包丁です。

通常の出刃包丁よりも刃が薄く軽いため、小回りが利き、アジのゼイゴ取りや、数多く捌く際の作業効率が良いのが特徴です。

⑥ 洋出刃包丁(両刃の出刃)

出刃包丁を西洋包丁(両刃)のスタイルにした「洋出刃包丁」です。

伝統的な出刃包丁(片刃)とは異なり、刃が左右対称なため、右利き、左利きと利き手を選ばず、まっすぐ切り込みやすいのが特徴です。片刃の扱いに慣れていない初心者にも向いています。

⑦ 骨スキ包丁(多用途・解体用)

本来は鶏などの骨から肉を剥がす(スキ取る)ための包丁です。

しかし、その鋭い切っ先と小回りの利く形状から、魚のエラや内臓を処理するのに非常に便利であると、魚捌きの分野でも注目されています。

⑧ 舟行包丁・身卸し包丁(中間的な万能和包丁)

出刃包丁と柳刃包丁の「中間」に位置する和包丁「舟行(ふなゆき)・身卸し(みおろし)」包丁です。

出刃包丁ほど厚くなく、柳刃包丁ほど長くありません。そのため、骨を断ち切るパワーは出刃に劣り、刺身の引きやすさは柳刃に劣りますが、1本で「捌き」と「刺身」の両方をある程度こなせるバランス型です。

⑨ 貝裂き包丁(貝・甲殻類用)

アワビや牡蠣(カキ)などの貝類を殻から外したり、イカや甲殻類を処理したりするのに使われる小型の包丁です。刃先が鋭く、狭い隙間に差し込みやすい形状をしています。釣りの現場などでも重宝されます。

⑩ キッチンバサミ(補助・ヒレ/骨処理用)

包丁ではありませんが、魚捌きにおいて非常に強力な補助道具です。

魚の硬いヒレを切り落としたり、小魚の腹を開いたりする際に便利です。特に「牛刀」で魚を捌く際は、刃こぼれのリスクがある硬い骨の部分をキッチンバサミで処理することで、安全かつ効率的に作業を進められます。

魚を捌くのに他の包丁で代用できる?

「釣った魚や丸魚を捌きたい。でも、専用の出刃包丁を持っていない…」 多くの人が悩むのが、「家にある包丁で代用できないか?」という点です。

結論から言うと、ご家庭に多い「三徳包丁」での代用は刃こぼれのリスクがあり推奨できません。しかし、「牛刀」であれば非常に有力な選択肢となります。

なぜ三徳包丁が推奨されず、牛刀なら代用できるのか。その明確な違いを解説します。

牛刀(代用・万能包丁)

本来は肉や野菜を切るための西洋包丁ですが、近年では魚捌きの「代用」として非常に優秀であることが分かっています。

刃渡り18cm程度の「牛刀」でも、2kgクラスの真鯛を捌き、刺身にすることまで可能です。刃が薄いため骨を「叩く」ことはできませんが、コツさえ掴めば汎用性が高く、最初の一本として有力な選択肢となります。

三徳包丁(家庭用万能包丁)

日本の家庭で最も普及している万能包丁です。

アジやイワシといった骨の柔らかい小魚程度なら捌くことも可能ですが、推奨はされません。刃が薄すぎるため、鯛やブリなどの中型魚の硬い骨を切ろうとすると、ほぼ確実に「刃こぼれ」や「刃欠け」を起こしてしまいます。

このように、家にある包丁でどうしても代用するなら、「牛刀(とキッチンバサミの併用)」が最適な選択肢となります。

とはいえ、牛刀は刃が薄いため、硬い骨を叩き切る出刃包丁のパワーには及びませんし、刺身を引き切る柳刃包丁の美しさにも限界があります。

あくまで「代用」として魚捌きに挑戦するなら牛刀、今後も本格的に魚を捌いていくなら、やはり「出刃包丁」と「柳刃包丁」を揃えるのが、上達への一番の近道です。

魚を捌く包丁の選び方

魚を捌く包丁を選ぶ際は、「最初の一本をどうするか」という目的を明確にし、「包丁の種類」「素材」「刃の形状」の3つのポイントを確認することが重要です。

選び方①:包丁の種類から選ぶ

魚を捌く包丁には、捌く魚の大きさや目的に合わせて多くの種類があります。まずは代表的な包丁の種類と、その役割を見てみましょう。

包丁名 特徴(用途・適した魚)
出刃包丁 刃が厚く重い。鯛やブリ、カレイなど、硬い骨や頭を断ち切る「捌き・骨断ち用」。
柳刃包丁 刃が長く薄い(関西型)。捌いた後のサク(切り身)を、繊維を潰さず「一度で引き切る」ための刺身用。
蛸引き包丁 刃が長く薄く、先端が四角い(関東型)。柳刃と同じく、サクから刺身を引くために使われます。
マグロ包丁 刃渡りが非常に長い(60cm超も)。その名の通りマグロを解体するための巨大な包丁。
アジ切り包丁 小型で薄い出刃包丁。アジ、イワシ、キス、メバルなどの小魚を数多く捌くのに特化。
洋出刃包丁 両刃スタイルの出刃包丁。用途は出刃と同じ(鯛、ブリなど)。利き手を選ばず、初心者にも扱いやすい。
骨スキ包丁 本来は鶏の解体用。先端が鋭く、魚のエラや内臓処理、関節に刃を入れる細かい作業に便利。
舟行包丁・身卸し包丁 出刃と柳刃の中間。アジ、サバ、中型までの鯛なら、1本で捌きと刺身をある程度こなせるバランス型。
貝裂き包丁 アワビや牡蠣(カキ)を殻から外したり、イカを処理するのに適した小型包丁。
キッチンバサミ 魚の硬いヒレ(特に鯛やカサゴ)や小骨(ハモの骨切り補助など)の処理に便利な補助道具。

これだけ種類があると、どれを選べば良いか悩んでしまいますよね。 もちろん、捌きたい魚の種類や大きさによって最適な包丁は変わってきます。

もし「特定の魚専用」ではなく、「色々な魚を汎用性高く捌けるようになりたい」と思うなら、まずは魚捌きの基本である「出刃包丁(捌き・骨断ち用)」と「柳刃包丁(刺身用)」の2本を揃えるのがおすすめです! この2本があれば、ほとんどの魚捌きと刺身に対応できますよ。

あとは、「アジなどの小魚をメインに捌きたい(→アジ切り包丁を追加)」「貝類も扱いたい(→貝裂き包丁を追加)」といった、ご自身の具体的な用途によって、他の専門包丁を選んでみてくださいね。

選び方②:素材(「ステンレス」と「鋼」)

包丁の素材は、切れ味と手入れのしやすさに直結します。

1.錆びにくく手入れが楽な「ステンレス」|初心者・出刃・牛刀におすすめ

家庭用や初心者に最も推奨される素材です。メリットは「錆びにくく、手入れが圧倒的に楽」であること。

鋼と比べて切れ味が劣ると言われてきましたが、近年はモリブデン鋼やVG10(ブイジーテン)、銀三鋼など、切れ味も非常に鋭いステンレス素材が増えています。「出刃包丁」や「牛刀」など、水や骨に触れる時間が長い包丁はステンレスが使いやすいでしょう。

2.切れ味重視の「鋼(ハガネ)」|刺身包丁(柳刃)におすすめ

プロの料理人が好む伝統的な素材です。メリットは「抜群の切れ味」と「研ぎやすさ」です。 刺身は「切り口が命」と言われ、鋼の鋭い切れ味は魚の細胞を押し潰さず「断ち切る」ため、旨味(ドリップ)を逃さず、角の立った美しい断面を生み出します。

一方、デメリットは「非常に錆びやすい」こと。主成分が鉄であるため、水分、塩分、そして特に「酸」(レモンやトマトなど)や「アク」(野菜)に触れると、あっという間に錆びてしまいます。

しかし、驚くべきことに「刺身包丁(柳刃)」に関しては、あえて鋼が推奨されることがあります。

なぜなら、柳刃包丁が使われるのは、魚の血、内臓、塩分などをきれいに洗い流した後の「サク(身)」を切る、調理の最終工程だからです。

鋼の最大の弱点である「酸」や「アク」(野菜など)、「塩分」に触れる機会が調理工程上ほぼ無いため、錆びるデメリットを最小限に抑えつつ、切れ味という最大のメリットだけを最大限に活かせるのです。

選び方③:刃の形状(「片刃」と「両刃」)

包丁の刃の付き方(形状)は、切れ味の鋭さ、食材への切り込み方、そして扱いやすさに直結する重要なポイントです。

1. 片刃(かたば)|切れ味重視・和包丁(出刃・柳刃など)

出刃包丁や柳刃包丁といった伝統的な和包丁に採用されています。

  • 特徴: 刃が片面(通常は表側)にしか付いておらず、裏側は平ら(または少し凹んでいる)構造です。
  • メリット: 刃が食材に対して鋭角に食い込むため、非常に切れ味が鋭いのが最大の特徴です。また、切った食材が刃から離れやすいため、柳刃包丁で刺身を引く際に身が張り付きません。
  • 注意点: 【最重要】構造上、「右利き用」と「左利き用」が明確に分かれています。 ご自身の利き手と逆のものを購入すると使えないため、必ず確認してください。

2. 両刃(りょうば)|扱いやすさ重視・洋包丁(牛刀・三徳など)

牛刀や三徳包丁など、西洋包丁や現代の家庭用包丁の主流です。

  • 特徴: 刃がV字型に、左右対称に付いています。
  • メリット: 力が左右均等にかかるため、食材に対してまっすぐ切り込みやすいのが特徴です。クセがなく初心者でも扱いやすく、家庭用の万能包丁に向いています。
  • 注意点: 利き手を選びません(右利き・左利きどちらの方でも使えます)。

魚を捌く包丁のお手入れ方法

魚捌き包丁、特に切れ味を重視した「鋼(ハガネ)」の包丁は、正しいお手入れをしないとすぐに錆びてしまいます。切れ味を維持し、包丁を長持ちさせるためのお手入れ方法をご紹介します。

錆びさせないための基本:使用後はすぐに洗い、水分を完全に拭き取る

 最も重要な基本です。魚の血液や塩分は錆びの原因になります。

  1. 使用後はすぐに洗う:作業が終わったら(あるいは鋼の包丁であれば作業の合間にも)、包丁を真水でしっかりと洗い流します。
  2. 水分を完全に拭き取る:乾いた布やキッチンペーパーで、刃と柄の水分を「完全に」拭き取ってください。特に刃と柄の境目(アゴ部分)は水分が残りやすいので注意が必要です。
  3. (鋼の場合)油を塗る:長期間使用しない場合は、錆止めのために椿油などの専用油を薄く塗っておくと万全です。

「研ぐ練習」をしよう

魚捌きの上達を目指す初心者に、おすすめなのが「まず研ぐ練習をすること」です。

最初は安価な包丁や、家にある使っていない包丁(錆びていても研ぎ直せば使える)を練習台にしましょう。

研ぎに失敗すると、刃が波打ったり、包丁の形(刃線)が崩れてしまったりします。まずは練習用の包丁で研ぎの技術を身につけ、毎日キレイに研げるようになったら、ステップアップとしてお気に入りの一本を購入するのが、上達への一番の近道です。

よくある質問(FAQ)

Q. 今使っている「三徳包丁」で魚を捌いてもいいですか?

 A. アジなどの小魚なら可能ですが、推奨しません。

三徳包丁は刃が薄く、野菜や肉を切るのには適していますが、硬い骨を切るようには設計されていません。鯛やブリなど、ある程度の大きさの魚の骨を叩こうとすると、刃こぼれや刃欠けを起こす危険性が非常に高いです。安全のためにも、専用の包丁(出刃包丁)か、代用できる牛刀の使用をおすすめします。

Q. 結局、魚を捌くには包丁が何本必要ですか?

A. 目的によって異なりますが、「1本」または「2本」です。

・完璧を目指すなら「2本」: 魚を捌き、骨を断ち切るための「出刃包丁」と、刺身を美しく引くための「柳刃包丁」の2本です。これが伝統的かつ理想的な形です。

・汎用性重視なら「1本」: 「牛刀(18cm目安)」に「キッチンバサミ」を組み合わせる方法です。肉も野菜も切りつつ、魚捌きにも挑戦できます。まずはお試しで始めてみたい初心者の方に最適です。

Q. 左利き用の包丁はありますか?

A. はい、ありますが、購入時に注意が必要です。

・片刃の包丁(出刃・柳刃など): これらの和包丁は、構造上「右利き用」と「左利き用」が明確に分かれています。必ず「左利き用」と明記されているものを選んでください。(※価格が割高になる場合があります)

・両刃の包丁(牛刀・三徳など): 刃が左右対称(V字)についているため、利き手を選びません。左利きの方が牛刀を選ぶ場合は、特に気にする必要はありません。しかし最近では「片刃牛刀」もあります。購入前に「片刃か両刃か」を確認すると良いでしょう。

Q. 鋼(ハガネ)の包丁は、どれくらいで錆びますか?

A. 非常に錆びやすいです。

 鋼は、水分、塩分、酸(レモンやトマトなど)、アク(野菜)に非常に弱いです。濡れたまま放置したり、魚の血や海水が付着したままにしたりすると、早ければ数十分〜数時間で変色し、錆び始めます。使用後はすぐに真水で洗い、乾いた布で水分を「完全に」拭き取ることが鉄則です。

まとめ:まずは「出刃」と「柳刃」で、魚捌きに挑戦しよう

魚を捌くための包丁選びは、理想と現実の間で悩みがちな、初心者が最初にぶつかる壁です。

確かに、魚の「骨を断ち切る(出刃包丁)」「刺身を引き切る(柳刃包丁)」を完璧にこなすなら、専用の2本を揃えるのが王道です。

しかし、家庭用の三徳包丁で代用しようとすると、硬い骨による刃こぼれのリスクがあり推奨できません。

そこで、初心者がまず「最初の一本」として選ぶべき現実的な選択肢は、あなたの料理スタイルに合わせた以下の2つに絞られます。

  1. 魚捌きに特化するなら:「ステンレス製の出刃包丁(15cm)」
    「釣った魚を捌きたい」「本格的に三枚おろしをマスターしたい」という、魚捌きが明確な目的である人向け。骨を断ち切るパワーがあり、上達への近道です。
  2. 調理全般と兼用したいなら:「ステンレス製の牛刀(18cm)+キッチンバサミ」「まずは1本で挑戦したい」「肉も野菜も魚も切りたい」という、汎用性を重視する人向け。硬い骨はハサミで処理すれば、幅広い調理に対応できます。

どちらを選んでも、ご家庭で魚を捌くことは十分に可能です。ご自身のスタイルに合った一本を見つけ、新鮮な魚の旨味を引き出す、本格的な魚料理にぜひ挑戦してみてください。

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